決定版!新基準の人員配置、自己評価表

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平成30年4月の改定についてはこちら!

障がい児の新たな支援場所として、期待を集める放課後等デイサービス

放課後や学校が休業するときに障がいをもつお子さんが過ごす場所として、大きな注目を集めている放課後等デイサービス。生活能力を向上させる訓練や地域社会との交流を通じて、障がい児の自立を支援する場所です。厚生労働省(以下、厚労省)によって2012年に制度化されて以降、それまで学童保育を利用しづらかった障がい児が安心して過ごせる、新たな居場所が生まれました。2012年以降、新規開設は増加し続け2017年現在、全国で8,400の事業所が運営されています。

事業所の急増に伴い、厚生労働省は開設基準を厳格化

放課後等デイサービス新規開設が増加する中で、「報酬の不正受給」や「ケアの怠慢」などのサービスの低下で問題となる事業所が現れました。これを重く見た厚労省は、2017年1月6日に開かれた社会保障審議会障がい者部会において、放課後等デイサービスの開設基準を大きく改正する旨を発表しました。まず改正方針を示すガイドラインを発表し、それに対する国民の声を取り入れ、策定されたのが今回の新基準です。

放課後等デイサービス新規開設要件で注意することとは?

2017年4月以降に新しく開設した放課後等デイサービスの施設は、新規開設要件をクリアする必要があります。新基準になることで変わったことは何か、またどういった点に注意が必要なのかについて、改めてみていきましょう。

新基準で大きく変わったのは、人員配置基準

まず大きな変化として挙げられるのが、放課後等デイサービスの従業者について定めた人員配置基準です。新しい開設要件では従業者に保育士などの資格や実務経験が求められるため、条件をクリアする人員の確保が難しくなったと言えるでしょう。基準人員の半数以上を児童指導員または保育士としなければならないため、人件費が増大することが予想されます。
詳しい必要人数はこちらの記事に!

新基準では児童発達支援管理責任者、児童指導員に資格や実務経験が必要

放課後等デイサービスで必要なスタッフとして制定されている管理者、児童発達支援管理責任者、児童指導員、指導員という分類は変わりませんが、児童発達支援管理責任者および児童指導員、指導員については項目がそれぞれ追加されています。それぞれの項目について、具体的に見てみることにしましょう。

 1.児童発達支援管理責任者

改訂以前の要件と比較してみると下記のようになります。

旧 定められた研修を受講し、また障がい児者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における5~10年の直接支援実務経験があること、もしくは相談支援や対象の国家資格等による仕事に従事しているなどの経験があること

プラスされる要素: 障がい児などの支援で3年以上の実務経験があること

障がい児に合わせた支援計画を策定する役割で、事業所に1人必要とされる児童発達支援管理責任者には、障がい児支援の実務経験が追加となりました。これまでは高齢者介護の経験で児童発達支援管理責任者になれましたが、新基準では実際に障がい児などの児童の福祉に係る支援事業※1で3年以上の実務経験があることが必要となります。

※1 児童自立生活援助事業、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、小規模住居型児童養育事業、家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業、事業所内保育事業、病児保育事業及び子育て援助活動支援事業

●要点●

・障がいがあるもの又は児童、老人の支援を行った期間が通算で5年以上あること
※そのうち障がいがあるもの又は児童の支援を行った期間が通算で3年以上の経験があること(記述の中で「又は児童」とあるため、ここには障がいのある児童の支援に加えて、障がいのない児童の支援を行った期間も算入ができることになります)

2.児童指導員、指導員

これまで従業者とされる指導員には、特別な資格は必要ありませんでした。また基準人員の従業者は無資格の従業者だけでも基準を満たせました。けれども新基準では基準人員の従業者は児童指導員・保育士・障がい福祉サービス経験者の3つに限定されます。なお基準人員を超える従業者は無資格でも構いません。

・基準人員の従業者
旧 要件なし

新 児童指導員、保育士、障がい福祉サービス経験者※2に限定する
半数以上は児童指導員か保育士とする
※2 障がい福祉サービス経験者は、介護業界でも要件を満たす

●要点●

・特に資格の必要なかった基準人員の従業者が上記3種の有資格者に限定されました。

補足
児童指導員の資格
今回制定された新基準で明記されている中でも特筆すべきは「児童指導員」。必要とされる資格は以下の通りです。

・地方厚生局長等指定の児童福祉施設職員養成学校を卒業
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・学校教育法規定の大学または大学院で社会福祉・心理・教育・社会のいずれかに関する
学部・研究科・学科・専攻を卒業
・小学校・中学校・高等学校のいずれかの教諭の免許状取得(学校種や教科は不問)
・児童福祉施設での実務経験者(高卒以上2年、その他3年)

新基準は既存の事業所にも適用。猶予期間1年のうちに備えを

新基準は既存の事業所についても適用されます。しかし2017年3月31日時点で存在する事業所については、1年間の猶予期間を設ける経過措置がとられました。猶予期間を超えても開設要件を満たさないまま運営している事業所に対しては、都道府県などが行政指導するとされています。

既存の事業所では、これまで請求していた有資格者配置加算は、猶予期間を終え新基準の人員資格に組み込まれた場合、加算項目から消える可能性があり、売上が減ることが予想されます。早期対応を心がけ、人員確保の混乱や売上の減少を最低限に抑えるよう、早めの対策をとることが肝要です。

さらに新基準では厚労省が提示するガイドラインの順守と、自己評価表のチェック・公開が義務となります。この自己評価表のチェック・公開はこれまでなかったので、今後は新しい事務作業が増えることになります。

まとめ

よりよい支援サービスを提供する事業所を増やすための新基準

新基準では障がい児に接する従業者に資格や実務経験が求められるようになったことから、新規参入は厳しくなったといえるでしょう。障がい児のことを考えた、質のよい支援サービスを提供する事業所を増やすために行ったのが今回の改正です。基準が新しくなることで、放課後等デイサービスの現場には多少の混乱が発生するかもしれませんが、よりよい支援サービスを安定して提供できる事業所の基板構築のきっかけととらえたいものです。

放課後等デイサービスの開設、ご相談は税理士でもある西山のりこ福祉行政書士事務所まで。
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