資金繰りにプラス!福祉・介護職員処遇改善加算とは?

事業所にとっては大きい! 申請した翌月から上乗せ請求ができる「福祉・介護職員処遇改善加算」

放課後等デイサービスの給付費には、様々な加算項目があります。行政が定めた加算項目には、質の高いサービスにつながる取り組みを行っている事業所を、報酬というかたちで評価する意味合いがあります。サービスの質向上のためには、従業員が働く環境を整えることも大切です。実際に児童の指導にあたる従業員の処遇を改善している事業所を評価する加算項目が「福祉・介護職員処遇改善加算」です。

この福祉・介護職員処遇改善加算にはいくつかの区分がありますが、最も多いもので所定単位の8.1%が加算されます。さらにこの福祉・介護職員処遇改善加算は、申請を出した翌月から加算分を上乗せした請求ができます。事業所の売上の大きな割合を占める項目といえる福祉・介護職員処遇改善加算。事業所としては安定した運営につながるため、ぜひ加算につなげたいところですが、注意が必要なポイントもあります。詳しく読み解いていきましょう。

福祉・介護職員処遇改善加算を理解するポイントは、キャリアパス要件

福祉・介護職員処遇改善加算には、Ⅰ~Ⅴがあります。2017年3月まではⅠ~Ⅳまででしたが、報酬改定として新しい項目が追加となったためⅠ~Ⅴとなりました。昨年までⅠと呼んでいた項目は現在Ⅱとなり、ひとつずつ繰り下がりました。加算項目のⅠ~Ⅴの違いを理解するためには「キャリアパス要件」がポイントとなります。

〇福祉・介護職員処遇改善加算Ⅰ(所定単位の8.1%を加算)
「キャリアパス要件Ⅰ」「キャリアパス要件Ⅱ」「キャリアパス要件Ⅲ」のすべて、および「職場環境等要件」を満たす場合

〇福祉・介護職員処遇改善加算Ⅱ(所定単位の5.9%を加算)
「キャリアパス要件Ⅰ」「キャリアパス要件Ⅱ」および「職場環境等要件」を満たす場合

〇福祉・介護職員処遇改善加算Ⅲ(所定単位の3.3%を加算)
「キャリアパス要件Ⅰ」または「キャリアパス要件Ⅱ」、および「職場環境等要件」を満たす場合

〇福祉・介護職員処遇改善加算Ⅳ(福祉・介護職員処遇改善加算Ⅲの90%)
「キャリアパス要件Ⅰ」または「キャリアパス要件Ⅱ」または「職場環境等要件」を満たす場合

〇福祉・介護職員処遇改善加算Ⅴ(福祉・介護職員処遇改善加算Ⅲの80%)
「キャリアパス要件Ⅰ」または「キャリアパス要件Ⅱ」または「職場環境等要件」のいずれも満たさない場合

●キャリアパス要件Ⅰ
従業員に就業規則を周知させている場合、加算できます。具体的には正社員の基本給額、任用期間、児童相談員へのステップアップ制度、パートの時給額などが明記された就業規則を従業員に公開していることが必要です。申請時にはこの就業規則の写しを添付します。
事業所の職員だけで、申請に通るしっかりとした就業規則を作るのは難しいでしょう。多少の費用はかかりますが、社労士などのプロに相談の上、就業規則をまとめると安心です。

●キャリアパス要件Ⅱ
児童の指導にあたる従業員の資質を向上させる取り組みを行っている場合、加算できます。介護福祉士等の資格と実務経験を5年もつ人材は、所定の研修を受けることで児童発達支援管理責任者になることができますが、この研修に送り出すことも要件の対象になります。従業員が資格を取得するための勉強をバックアップする取り組みなども対象となります。

●キャリアパス要件Ⅲ
昇給の仕組みがあることが加算対象となります。従業員のスキルアップに伴い、昇給させる制度があるかがチェックされます。例えば株式会社の場合、会社が赤字の場合は昇給や賞与をなしにするケースがありますが、福祉・介護職員処遇改善加算を受けている放課後等デイサービスの事業所では、昇給・賞与なしは認められません。行政は加算分を従業員にしっかり還元することを求めます。

●職場環境等要件
賃金以外の処遇改善を行っていることが対象となります。具体的には従業員の資質を向上させる取り組み(研修など)を行っていること、従業員が長く働ける職場環境を構築していることです。職場環境の例としては、育児休業制度、ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化、健康診断・こころの健康等の健康管理面の強化など、様々な取り組みが挙げられます。


福祉・介護職員処遇改善加算のスケジュール

福祉・介護職員処遇改善加算は、申請した翌月から加算請求ができます。事業所開設から申請、入金、従業員への還元の例をみてみましょう。

〇福祉・介護職員処遇改善加算の流れ
平成29年
4月 事業所開設
5月 福祉・介護職員処遇改善加算申請(平成29年度)
6月 6月利用分から加算分を上乗せ申請
8月 加算分の入金スタート
平成30年
3月 5月~3月までの福祉・介護職員処遇改善加算額を算定
4月 福祉・介護職員処遇改善加算申請(平成30年度)
5~6月 早めの夏季賞与として従業員に加算分を還元
7月 平成29年度の福祉・介護職員処遇改善加算分の還元について報告

福祉・介護職員処遇改善加算で得た報酬は、従業員に還元することが原則です。申請の翌月から加算分の請求が可能ですが、いつ従業員に還元するかは事業所の自由となっています。そのため事業所で加算の1年分をプールし、翌年に賞与というかたちで従業員に還元するところが多いようです。福祉・介護職員処遇改善加算額は大きいので、事業所にとっては資金繰りが助かる要素といえるでしょう。

ここがポイント! 福祉・介護職員処遇改善加算申請

・申請は毎年出す
福祉・介護職員処遇改善加算申請は毎年出す必要があります。申請で得た加算分を従業員にどう還元したか、翌年報告する義務があります。

・従業員への還元分には社会保険料を含めてもOK
従業員の社会保険料は、個人50%、会社が50%の負担となっています。従業員へ支払う給与や賞与には、会社負担の50%を含めてもよいことになっています。会社負担の社会保険料を含めた給与や賞与の額を細かく計算することが、安定した資金繰りのヒントとなることがあります。詳しくは社労士や税理士など、プロに相談すると安心でしょう。

・加算分を還元できるのは指導にあたっている人のみ
福祉・介護職員処遇改善加算申請の加算分を還元できるのは、事業所で児童の指導にあたっている従業員のみとなります。児童発達支援管理責任者や管理者には払い出すことはできません。

・役員への払い出しは注意が必要
放課後等デイサービスの事業所によっては、役員が指導員を兼任していることもあるでしょう。実際に指導にあたっているので福祉・介護職員処遇改善加算申請の加算分を払い出すことができそうですが、役員への給与・賞与は税務上制限があります。後で問題とならないようにするためには、税理士などのアドバイスを受けるとよいでしょう。

福祉・介護職員処遇改善加算を正しく理解し、活用しよう

事業所にとっては、1年分が先に入金される福祉・介護職員処遇改善加算は、安定した資金繰りに大きな影響を与える項目です。加算申請の条件を満たして従業員の処遇がよくなれば、サービスの質も向上し、利用者に支持される事業所につながっていくでしょう。制度をしっかりと理解して活用することで、さらに多くの利用者を支援できる事業所を目指したいものです。