福祉のふるさと納税? 寄付で返礼品の「うまふく」

返戻品のイメージ

放課後等デイサービスを卒業した利用者はどこへ?

放課後等デイサービスのほかにも、障がいを持つ方を支援する仕組みはいろいろあります。児童を対象にしているのが放課後等デイサービスですが、18歳以上を対象に日常生活や就労の支援を行うのが、障がい者福祉施設です。
厚労省のデータによれば障がいをもつ方々が特別支援学校を卒業後、障害福祉サービスに移行する割合は約61.7%となっています(参考:厚労省「障害者の就労支援について 平成27年7月14日」)。放課後等デイサービスを卒業した利用者が、その後どうやって自立していくか、中でも経済的な自立につながる就労支援は、事業所運営者にとっては大きな関心ごとのひとつではないでしょうか。

障がいを持つ方の工賃が低いという現状

厚労省のデータによれば、現在全国で約21.6万人の障がいをもつ方が、就労支援を行う施設で働いています。例えばシール貼りや容器詰め、検品などを行う軽作業、パンやお菓子などの食品製造や販売など、全国にある障がい者福祉施設で様々な仕事に就いています。経済的自立をサポートするのが就労支援の大きな目的のひとつですが、残念ながらそこで働く人達の工賃の水準は低いままとなっています。

平成25年度の利用者1人当たりの平均工賃月額(参考:厚労省)
・就労継続支援A型(雇用型)69,458円
・就労継続支援B型(非雇用型)14,437円

実は障がい者福祉施設の工房からは、一般に知られていない優れた商品が数多く生まれています。地域社会との接点を広げる目的から、地元の新鮮な食材を使った魅力ある食品も各地で製造されています。ところが一般の方々には、こうした商品の魅力がなかなか伝わっていません。障がいをもつ方々が製造する商品の魅力を伝え、販売促進につなげることで、一般社会が全体として彼らの経済的自立をサポートする仕組みとしてつくられたのが「うまふく」です。

“福祉界のふるさと納税”で、障がい者の就労をサポートする「うまふく」

2017年の8月にリリースしたばかりの「うまふく」のwebサイトには、障がい者福祉施設の工房で製造・販売されている商品が紹介されています。「国産小麦と米粉のパンと焼き菓子」(晴れ晴れ:埼玉県川口市)、「よこすか海軍カレー」(あすなろ学苑:神奈川県横須賀市)、「湘南産の完熟トマトを使ったトマトジュース」(社会福祉法人 進和学園 しんわルネッサンス:神奈川県平塚市)など、丁寧に作られた魅力ある商品が並んでいます。商品ごとに寄付の金額が明記されており、寄付をすると返礼品としてその商品が送られてきます。

寄付をすると返礼品を選ぶことができるのは、ここ数年で大きな注目を集めた“ふるさと納税”と似ています。欧米と違って寄付の文化が根付いていない日本。「うまふく」は、一般の人も気軽にできる新しい寄付のかたちを実現したサービスといえるでしょう。

今後「うまふく」が掲載する施設が増えていけば、施設がこれまでなかなか接点を持てなかった一般の人々と、工房で生まれた商品をつなぐ貴重な場となりそうです。高品質であるにも関わらず、認知度が低いことで売れなかった工房の商品に脚光が当たるチャンスにもなるでしょう。障がいをもつ方々が製造した商品の販売が促進されれば、彼らの賃金向上の手助けになり、就労支援の目的のひとつである経済的自立への大きな動きとなっていくでしょう。

障がい者福祉施設の理解を広め、PRもできる「うまふく」

「うまふく」では、障がい者福祉施設からの掲載を積極的に行っています。「施設で製造・販売している商品をもっと広くアピールしたい」「一般の方に施設の活動を知ってほしい」「寄付を募りたい」などといった場合に、「うまふく」を活用することもできそうです。

どの施設も施設と地域社会との接点を作り、その中で障がいをもつ方々が経済的に自立できる道を模索しています。「うまふく」を通じて、一般の人々に施設の活動を広く知ってもらい、寄付を通じて就労支援がより強力になるのは喜ばしいことではないでしょうか。

障がい者福祉施設への寄付は、所得税の寄付金控除の対象になる可能性も

「うまふく」を利用して行った社会福祉法人や認定・特例認定NPO法人が運営する障がい者福祉施設に対しての寄付は、所得税の寄付金控除の対象となります。言い換えると株式会社が運営する障がい者福祉施設に対する寄付は、控除の対象とならないので注意が必要です。

行政だけでなく、一般の人々も障がい者を支援できる「うまふく」

障がいをもつ方々が社会の一員として生き生きとした人生を送るためには、経済的自立に加え、社会全体の理解も大切です。販売先が限られていた工房の商品を、インターネットを通じて日本全国に広く紹介することで、商品の魅力を通じて障がい者の方々を支援しようという「うまふく」。こうした一般の人々からの支援の動きがひろがっていくことを期待したいですね。